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2026-08-19
取扱説明書のWeb化とは?進め方とQRコード活用の注意点を解説
取扱説明書をWeb化する方法を、紙に残す情報の考え方、QRコード・URL設計、既存マニュアルの移行手順まで解説します。
製品の取扱説明書を、紙だけでなくWebでも提供するケースが増えています。簡易説明書とQRコードを製品に同梱し、詳しい操作方法やトラブルシューティングはWebで確認できるようにする方法も、その一つです。
一方、産業機器や設備機器などでは、現在も紙の取扱説明書が重要な役割を担っています。安全上の要求や使用現場の通信環境、製品寿命、利用者層などによって、適した提供方法が異なるためです。
そのため、取扱説明書のWeb化では、単純に「紙をなくしてWebへ移す」のではなく、どの情報をWebに移し、どの情報を紙に残すのかを整理することが重要です。
また、「QRコードはどこに掲載するのか」「URLをどのように管理するのか」「既存の紙マニュアルをどう移行するのか」といった実務上の課題もあります。
本コラムでは、製造業で取扱説明書のWeb化を検討している方に向けて、基本的な進め方やQRコード運用の注意点、既存マニュアルを移行する際のポイントを解説します。
1. 取扱説明書のWeb化とは
取扱説明書のWeb化とは、これまで冊子や印刷物として提供していた説明書を、Web上でも閲覧できるようにすることです。
「Web説明書」「電子取説」「オンラインマニュアル」など、さまざまな呼び方があります。
代表的な提供方法には、次のようなものがあります。
形態 内容 向いているケース PDF公開型 紙版と同じPDFをWeb上で公開する 現在の制作フローを大きく変えずに始めたい場合 HTMLページ型 内容をWebページとして再構成する 検索性やスマートフォンでの閲覧性を高めたい場合 検索型マニュアル 目次・検索・絞り込みなどの機能を持たせる ページ数や製品バリエーションが多い場合
既存の紙マニュアルをPDF化して公開する方法から、HTMLページとして情報を再構成する方法まで、Web化の形態には幅があります。
そのため、まずは「どの形態を目指すのか」を決めることが重要です。
2. 取扱説明書をWeb化するメリット
更新内容を反映しやすい
紙の取扱説明書は、一度印刷すると簡単には修正できません。
Webで公開している場合は、掲載データを更新することで修正内容を反映しやすくなります。
ただし、製品型番や製造時期、マニュアルの版との対応関係は適切に管理する必要があります。
見出多言語・多品種に対応しやすいしタイトル
海外向け製品では、仕向地ごとに複数言語の取扱説明書が必要になることがあります。
Webであれば言語や製品型番ごとにマニュアルを分けて提供できるため、多言語・多品種の製品にも対応しやすくなります。
印刷・同梱の負担を抑えられる
Web化する範囲によっては、紙のページ数や同梱物を減らすことができます。
印刷費や用紙代、在庫管理、同梱作業などの負担軽減につながる可能性があります。
紙では掲載しにくい情報も提供できる
Webであれば、詳細な操作手順やFAQ、動画、拡大できる図版なども掲載できます。
関連情報へのリンクなど、紙とは異なる情報提供も可能です。
3. 取扱説明書をWeb化する進め方
取扱説明書のWeb化は、次のような流れで進めると整理しやすくなります。
ステップ1|Web化する範囲を決める
最初に、どこまでWeb化するのかを決めます。
例えば、次のような切り分けが考えられます。
紙に残すことを検討する情報
- 開梱直後に必要な情報
- 初期設定や設置時に必要な手順
- 安全上重要な注意・警告
- 保証・問い合わせ先
- Webマニュアルへの案内
Webへ移しやすい情報
- 詳細な操作方法
- 応用機能
- トラブルシューティング
- 仕様一覧
- FAQ
- 動画などの補足情報
「ユーザーがいつ、どこで、その情報を見るのか」を考えながら、紙とWebの役割を決めます。
ステップ2|製品とマニュアルの対応関係を整理する
製造業のマニュアルでは、製品シリーズや型番、仕向地、言語、仕様違いなどによって複数の版が存在する場合があります。
Web化する前に、どの製品に、どのマニュアルを紐づけるのかを整理しておくことが重要です。
具体的な棚卸し項目は「6. 既存の紙マニュアルをWeb化する手順」で解説します。
ステップ3|掲載先とURLを設計する
次に、Webマニュアルをどこで公開するかを決めます。
例えば、
- 自社サイト内
- 製品ページの下層
- 専用マニュアルサイト
- 製品サポートサイト
などが考えられます。
特に重要なのがURLの設計です。
QRコードを製品や印刷物に掲載した後は、QRコード自体に設定したURLを変更できません。
そのため、サイトリニューアルやCMS変更があっても使い続けられるよう、長期間維持するURLをあらかじめ設計しておきます。
ステップ4|既存原稿をWeb向けに整理する
既存の紙マニュアルを、そのままPDFで公開するのか、HTML化するのか、構成自体を見直すのかを判断します。
すべてを一律に作り直す必要はありません。
既存データの状態や利用頻度に応じて、Web化の方法を分けることがポイントです。
詳細は「6. 既存の紙マニュアルをWeb化する手順」で解説します。
ステップ5|QRコード・URLを用意する
Webマニュアルへの導線として、QRコードやURLを用意します。
掲載先としては、
- 製品本体
- パッケージ
- 簡易説明書
- 保証書
- 製品ラベル
などが考えられます。
製品の使用期間や保管状況を考えながら、ユーザーが後からでも確認しやすい場所を選びます。
ステップ6|公開後の更新ルールを決める
Webマニュアルは、公開後の管理方法まで決めておく必要があります。
例えば、
- 誰が更新するのか
- 誰が内容を確認・承認するのか
- 旧版を残すのか
- 型番と版をどう紐づけるのか
- 販売終了後、いつまで公開するのか
といったルールです。
特に製品寿命の長い機器では、販売終了後もマニュアルを必要とするユーザーがいることを想定しておきます。
4. QRコードを活用する際の注意点
QRコードをどこに掲載するか
QRコードの掲載場所には、それぞれ特徴があります。
掲載場所 特徴 製品本体 説明書を紛失しても確認しやすい。貼付面積やデザイン上の制約がある パッケージ 掲載スペースを確保しやすい。開封後に廃棄される可能性がある 簡易説明書・保証書 情報をまとめやすい。紛失される可能性がある
一つの場所だけに限定せず、製品本体と簡易説明書など、複数の導線を用意することも検討するとよいでしょう。
URLは長期間維持する前提で設計する
QRコードを印刷した後は、QRコード自体に設定したURLを変更できません。
そのため、
- QRコードには長期間維持する固定URLを設定する
- 実際の掲載先が変わった場合はリダイレクトで転送する
- 製品ごとのURLルールをあらかじめ決める
といった設計が必要です。
外部の短縮URLサービスを利用する方法もありますが、長期運用を考えると、自社ドメイン内で管理できるURLの方が扱いやすいでしょう。
QRコードだけでなくURLも併記する
QRコードは便利ですが、汚損や印刷品質、端末の状況などによって読み取れない場合があります。
そのため、短く入力しやすいURLも併記しておくと安心です。
読み取った後の画面まで設計する
QRコードから自社サイトのトップページへ移動させるだけでは、ユーザーがそこから自分の製品を探す必要があります。
できるだけ、
- 該当製品のマニュアルへ直接移動する
- 製品型番を選択・検索できる画面へ移動する
など、目的の情報へすぐアクセスできる導線にします。
5. 取扱説明書をWeb化するデメリットと対策
通信環境に依存する
屋外、工場、工事現場、地下などでは、安定した通信環境を利用できない場合があります。
対策:PDFのダウンロード提供を併用する、事前に端末へ保存できるようにする、必要な情報は紙でも提供する。
デジタルに不慣れなユーザーへの配慮が必要
QRコードの読み取りや、Web上での情報検索に慣れていない利用者もいます。
対策:URLを併記する、簡易説明書に利用方法を記載する、問い合わせ窓口を案内する。
QRコードが読み取れない場合がある
印刷品質や汚損、掲載サイズなどによって認識しにくくなる場合があります。
対策:十分なサイズと余白を確保し、印刷後に実機で読み取りテストを行う。
サーバー障害時に閲覧できなくなる
Webマニュアルは、サーバーやネットワークの影響を受けます。
対策:安定した環境で公開し、必要に応じてPDFをダウンロードできるようにする。
販売終了後も管理が必要になる
製品の販売が終了しても、ユーザーがその製品を使い続ける場合があります。
対策:製品寿命や保守期間を踏まえ、公開期間やアーカイブ方法をあらかじめ決めておく。
6. 既存の紙マニュアルをWeb化する手順
すでに紙の取扱説明書を多数保有している場合は、既存データをどう整理するかがWeb化の大きなポイントになります。
すべてを一度に作り直すのではなく、現在の状態を確認して優先順位をつけて進めます。
1|対象マニュアルを棚卸しする
まず、対象となるマニュアルの状況を整理します。
確認したい主な項目は次のとおりです。
- 対象製品・型番
- 仕向地
- ページ数
- 言語・言語数
- マニュアルの版
- 改訂履歴
- 販売・保守期間
- 制作元データの有無
- PDFデータの有無
- 図版・画像データの有無
長期間運用しているマニュアルでは、制作元データが残っておらず、PDFや紙しかないケースもあります。
その場合は、まずスキャンやデータ化を行い、PDF化して公開する方法も選択肢になります。
2|Web化の方法を分類する
棚卸ししたマニュアルを、状態や利用目的に応じて分類します。
そのままPDFで公開できるもの
現在の構成に大きな問題がなく、まずWeb上でも閲覧できるようにしたい場合。
HTML化した方が使いやすいもの
ページ数が多い、検索性を高めたい、スマートフォンでの利用が多い場合。
内容から再構成した方がよいもの
長年の追記で構成が複雑になっている、製品シリーズ間で情報が重複している、Web上では理解しにくい場合。
最初からすべてをHTML化するのではなく、新製品や利用頻度の高いマニュアルから段階的に進める方法もあります。
3|紙前提の構成や表現を見直す
紙の取扱説明書は、ページ順に読まれることを前提としている場合があります。
一方、Webでは検索結果やリンクから途中の情報へ直接アクセスされます。
そのため、
- 「前ページを参照」などページ順を前提とした説明がないか
- 見出しだけで内容を判断できるか
- 「上図」「左記」など誌面レイアウトに依存した表現が残っていないか
といった点を確認します。
4|画像や図版を見直す
紙用の画像や図版は、そのままWebで使用すると文字が小さく読みにくくなる場合があります。
必要に応じて、
- 拡大表示できるようにする
- 図を分割する
- Web向けに作り直す
- 動画に置き換える
といった方法を検討します。
5|用語や表記を統一する
長年更新しているマニュアルでは、同じものを異なる名称で呼んでいる場合があります。
例えば、
「電源ボタン」
「POWERボタン」
「電源スイッチ」
が混在しているようなケースです。
Web化を機に用語や表記ルールを整理すると、マニュアル全体の品質向上につながります。
検索機能を利用する場合は、検索結果にも影響するため、表記統一は特に重要です。
6|多言語版と原文の対応関係を整理する
日本語版の構成を変更すると、既存の翻訳データとの対応関係が分かりにくくなることがあります。
そのため、
- 原文と訳文の対応
- 言語ごとの最新版
- 翻訳済み・未翻訳箇所
- 共通文章と製品固有文章
などを整理しておくと、改訂時に変更箇所だけを翻訳しやすくなります。
多言語製品では、Web化そのものだけでなく、その後の改訂をどのように管理するかまで考えておくことが重要です。
7. 紙とWebを併用するという選択
取扱説明書をWeb化するからといって、すべての紙マニュアルをなくす必要はありません。
製品の性質や使用環境によっては、紙とWebを組み合わせる方法が適しています。
代表的には、次のような方法があります。
- 簡易説明書(紙)+詳細マニュアル(Web)
開梱・設置・初期設定などを紙で提供し、詳細な操作方法はWebで案内する。 - 日本語版(紙)+多言語版(Web)
主要市場向けの言語を紙で提供し、その他の言語をWebで提供する。 - 全文(紙)+全文(Web)
紙を残しながら、紛失時や外出先でも参照できるようWebでも提供する。
どの方法が適しているかは、製品の種類、使用環境、ユーザー層、製品寿命、仕向地などによって異なります。
また、製品によっては安全上の注意や警告表示について、法令や規格などで表示方法が定められている場合があります。
Web化の範囲を決める際は、対象製品や仕向地に適用される要求事項を確認し、必要に応じて品質保証部門や専門機関などと相談しながら進めてください。
PL法や各国規格の考え方については、以下の記事でも解説しています。
まとめ
取扱説明書のWeb化では、単純に紙をWebへ置き換えるのではなく、製品やユーザーに合わせて情報の提供方法を設計することが重要です。
特に、次の点を確認しておきましょう。
- PDF公開・HTML化など、Web化の形態を決める
- Webへ移す情報と紙に残す情報を整理する
- 製品・型番・言語・版の関係を整理する
- QRコードには長期間維持できるURLを設定する
- QRコードだけでなくURLも併記する
- 通信環境やユーザーの利用方法を考慮する
- 既存原稿はWeb向けに構成や表記を見直す
- 公開後の更新・版管理ルールまで決めておく
紙とWebのどちらが適しているかを比較したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
取扱説明書のWeb化をご検討の方へ
クイックスでは、製品マニュアルの制作から多言語展開、Web化まで、マニュアル制作の実務に合わせたご支援を行っています。
例えば、
- 「紙の取扱説明書をどこまでWeb化すればよいか分からない」
- 「既存のInDesignやPDFデータを活用してWeb化したい」
- 「製品や型番が多く、マニュアルの管理が複雑になっている」
- 「多言語マニュアルの更新・版管理を効率化したい」
- 「紙とWebを組み合わせた提供方法を検討したい」
といった段階からご相談いただけます。
既存マニュアルの状態や運用方法を確認しながら、Web化の方法をご提案します。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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