コラム Column
マニュアル
2025-06-19
取扱説明書のWeb化・システム化の前に考えるべき“情報の構造設計(Information Architecture)”とは?
見た目やツールより先に考えるべき“設計”があります。

取扱説明書のWeb化や運用システム化が進み、「探しやすく・使いやすい」構造設計の重要性が高まっています。その鍵を握るのがInformation Architecture(情報アーキテクチャー)です。本稿では、紙・PDF・Webのいずれにも共通する“設計の起点”として、この考え方をどう活かすかを解説します。
情報の構造設計(Information Architecture)とは?
マニュアルを作成・運用する際に欠かせないのが、「誰が・どの場面で・どんな情報を必要とするか」を出発点に情報を整理し配置するという発想です。これをWebや文書設計の分野ではInformation Architecture(情報アーキテクチャー)=情報の構造設計と呼びます。
難しそうに聞こえますが、要は「どこに何を置くか」「どうたどり着けるか」をユーザー視点で決めること。紙マニュアルであっても、構造が明確なら改訂や再編集が容易です。Web/PDFなど媒体が変わっても通用する“共通言語”としてIAが注目されています。
手段は変わっても、ぶつかる課題は共通している
マニュアル制作・活用の現場では、Web化や運用のシステム化など、表現や管理の手段が多様化しています。
たとえば、
- Web化:スマホやPCで快適に閲覧できるマニュアルをつくる
- システム化:作成・改訂・配信の流れを仕組みとして整える
どちらも目指すゴールは違いますが、実際に現場で発生する課題には共通点があります。
- 必要な情報が見つからず、ユーザーが迷う
- 更新のたびに手間がかかり、属人化する
これらの問題を未然に防ぐには、「どこに何を置くか」「どうつなげるか」をあらかじめ設計することが不可欠です。手段が変わっても、必要なのは共通して「構造の設計」=IAなのです。
なぜ今、取扱説明書に IA が求められるのか
マニュアルの利用スタイルが変化しています。紙のように順番に読むのではなく、必要な情報を検索してピンポイントで参照するのが今の主流です。
検索型行動が主流
ユーザーは「エラーコードE01の直し方」などのキーワードで直行します。分類が曖昧だと必要情報にたどり着けず“使われないマニュアル”になってしまいます。
Web化した場合、最新であることが当たり前に期待される
Webマニュアルでは、情報が更新されていることが前提です。新しい製品仕様や法令対応などにすばやく追従できなければ、“古いマニュアル”という印象を持たれてしまいます。
構造が整理されていれば、「どこを直せばいいか」「他に影響が出る箇所はどこか」が把握しやすく、改訂もしやすくなります。
このようにIAは、使いやすさと運用しやすさの両立に不可欠な要素です。
どう始める?IA設計のステップ
「じゃあ、どこから始めればいいの?」という方向けに、IA設計の基本ステップを紹介します。
ステップ やること 成果物 1. 情報棚卸し 既存マニュアルやFAQを洗い出して整理 コンテンツ一覧表 2. ペルソナ&シナリオ設定 代表的なユーザー像や利用場面を明確化 ペルソナ/利用シナリオ 3. カードソート 情報単位で分類し、ユーザー視点の構造を模索 暫定カテゴリ構造 4. サイトマップ設計 情報の階層・導線・見出し名を設計 サイトマップ/UIモック 5. 検証と反復 実際のユーザー操作で構造の分かりにくさを発見し改善 IA設計の確定案
ポイント:CMSやツールの選定はステップ4以降でOKです。構造が固まらないうちに導入すると、ツールに合わせた“場当たり運用”になりがちです。
よくある構成の失敗例と改善ヒント
このような項目で自社マニュアルを簡易的に診断することも可能です。
ありがちな失敗例 ユーザー側の問題点 改善の方向性 ✔ チェックポイント 機能単位で分類 目的別に探しづらい 行動ベースで分類 機能名が章見出しになっていないか 部署ごとに項目立て 社内都合で意味不明 シナリオに沿って再構成 章タイトルに部署名が残っていないか 専門用語・略語だらけ 検索/理解を妨げる 誰にでも分かる表現へ 検索キーワードで出てくる言葉か 階層が深すぎる 現在地が分からない パンくず・リンクで補助 3クリック以内で目的地に届くか 1ページに詰め込み 情報が大ざっぱ トピック単位に分割・関係づけ 見出し1つに説明が長文で続いてないか
まとめ
取扱説明書のWeb化や運用システム化を成功させる鍵は、ツール選定ではなく“情報の構造設計”にあります。最初にユーザー視点で「どこに何を置くか」を決めれば、使いやすさと改訂効率の両方が手に入ります。弊社は紙・PDF・Webいずれのプロジェクトでも、IA設計から伴走します。お気軽にご相談ください。
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