コラム Column
ヘルスケア
2025-06-16
医療DXの進展とともに見直す女性・子ども支援のあり方
医療DXで見直す支援のあり方。女性と子どもへの健康投資が未来を変える鍵に。

医療分野のデジタル化、いわゆる「医療DX」が急速に進められています。
健康保険組合や、健康経営を担う企業のご担当者にとっても、避けて通れないテーマとなりつつあります。
これは単なるIT化ではなく、国民一人ひとりの健康を守るための構造改革です。中でも重要視されているのが、女性と子どもへの健康支援。少子高齢化が進む今、経済的な補助だけでなく、意欲向上を図る職場環境づくりへの関心が高まりつつあります。
医療DXは“届ける支援”の時代へ
「医療DX」とは、医療の質を高め、情報を活用し、国民の健康を向上させるためのデジタル化施策です。厚生労働省はその目的を、次の5つに整理しています。
- 国民の健康増進
- 質の高い医療の提供
- 医療機関の業務効率化
- システム・人材の有効活用
- 医療情報の二次利用
この5つのうち、本コラムでは「1. 国民の健康増進」に焦点を当てています。
この領域は、健康保険組合や企業が日々取り組む保健事業・健康経営と直結しており、医療DXの活用によって“どう届けるか”の再設計が進められている分野です。
特定健診、特定保健指導──こうした施策はすべて、医療DXが掲げる健康増進の中核に位置づけられており、今後はその恩恵を活かして、“効果的に、継続的に、対象者に届く”支援をどう設計していくかが問われています。
通知のデジタル化や行動支援に、補助金も活用できる
医療DX推進にあたっては、国からの財政支援も用意されています。たとえば、令和5年度補正予算では約9.9億円、令和6年度では15.3億円の補助金が盛り込まれました。これらの補助は、健康保険組合や企業が行う健康支援の“届け方”の改善にも使うことができます。
具体的には、これまで紙の郵送で行っていた健診や保健指導の案内を、メールやLINE、Webポータルなどのデジタル手段に置き換える取り組みや、対象者の行動を自然に後押しする“ひと工夫ある通知文”の導入などが挙げられます。
つまり、「通知を送ったかどうか」ではなく、“その通知が行動につながったかどうか”が評価される時代になったのです。これからの支援では、制度や予算の活用だけでなく、“どうすれば届き、どうすれば動いてもらえるか”という設計そのものが問われています。
少子化・就労支援の両立に、“健康支援”が鍵
こうした“届く支援”の再設計は、健診や保健指導の枠を超えて、より根本的な社会課題──少子高齢化や労働環境──とも深く関わっています。医療DXは、単なる業務効率化ではなく、これまで支援が届きにくかった領域にこそ光を当てるものです。
少子高齢化が進む今、出生数や就労人口の減少は社会保障制度や企業経営にも大きな影響を与えています。2023年の出生数は72万7,288人、合計特殊出生率(TFR)は1.20と過去最低を更新し、政府は「2030年までがラストチャンス」と警鐘を鳴らしています。
この状況を打開するには、子どもを育てやすい社会と、女性が働き続けられる環境の両立が不可欠です。実はこの2つは“健康支援”という共通の視点でつながっています。たとえば、妊娠・出産・育児期のサポートや、月経・更年期・不妊治療など女性特有の健康課題への支援は、出生率の改善と就労継続の両方につながります。
医療DXは、こうした支援を“制度としてつくる”だけでなく、“一人ひとりに届ける”ための手段です。健康保険組合や企業が連携し、的確なタイミングで、必要な支援を確実に届ける仕組みが、これからの少子化対策に直結するのです。
女性の健康支援は、生産性リスクにも関わる
月経、更年期、不妊治療など、女性特有の健康課題は就労環境に直接影響を与える要素です。これらは近年「プレゼンティーイズム(出勤はしているが生産性が下がっている状態)」という形で企業リスクと捉えられるようになりました。
健康経営優良法人の認定項目にも「女性の健康支援」が含まれており、企業にとっても対策が求められるテーマです。健康保険組合と企業が連携し、支援制度の整備や実効性のある健康施策を行う意義は今後ますます大きくなるでしょう。
“そっと背中を押す”ナッジで行動を変える
医療DXでは、システム整備や情報共有だけでなく、「行動科学」の視点も不可欠です。その代表例が「ナッジ理論」です。
ナッジとは、選択の自由を残しながら、人が望ましい行動を自然に選べるよう“そっと背中を押す”手法のこと。これは、健診の受診率向上や保健指導への参加率向上といった行動変容支援において非常に有効であり、医療DXの推進における“人に届く支援”を補完する手段でもあります。
たとえば、通知の中で自宅や勤務先から近い健診機関を提示するだけでも、「それなら行けそう」と感じて受診率が高まることがあります。
こうした“行きやすさ”の提示は、行動科学における“ナッジ的な工夫”のひとつとされています。
負担を減らし、選択をシンプルにすること自体が、行動を後押しする大切な要素なのです。
パーソナライズで支援が“続く仕組み”に
ナッジをより効果的に機能させるには、通知の内容を対象者ごとに最適化する「パーソナライズ」の視点が欠かせません。
たとえば:
- 20代女性にはPMS(月経前症候群)対策セミナーの案内
- 40代女性には更年期チェックリストの送付
- お子さまの保護者には、子どもの発達段階に応じた健康習慣のポイントをまとめた動画やチェックリストの案内
といったように、年齢やライフステージに応じた“届き方”を検討することで、行動支援は単発ではなく「続けられる支援」へと変化します。
その積み重ねが、日々の不安や迷いを軽減し、心身ともに健やかに生活するための“前向きな習慣”を形づくっていくのです。
このような“届け方”は、紙・Web・動画・DMなど多様な手段でも展開できるため、健康保険組合・企業のリソースに応じた柔軟な支援が可能です。
DXを活かした健康支援を
医療DXは、単なるIT導入ではなく「人に届く支援」のインフラ整備です。
そして本当に必要なのは、補助金だけではなく、“どう届けるか”という行動設計の工夫です。女性や子どもの健康は、家族の健康、企業の持続性にも直結します。
そして、その支援は単なる医療の提供ではなく、「安心して暮らせること」「迷わず行動できること」など、日々の精神的なゆとりを支えるものでなければなりません。
健康保険組合と企業が連携し、ナッジやパーソナライズを活用した“続けられる支援”や、制度そのものの再設計に取り組むことが、社会全体の健康水準を押し上げる鍵となります。
弊社では、ナッジ理論を取り入れた通知設計や、属性に応じたパーソナライズDMの制作支援も行っています。貴組織に合った支援の形を一緒に考えてみませんか?
クイックスの支援ツールのご紹介
最後に、“届け方の工夫”を具体的に実現するためのツールをご紹介します。
- 健診Assist:婦人科検診情報 やセルフチェックを健診通知に自然に添えられます
- セルフメディケーション通知:市販薬の選び方や不調との 付き合い方をやさしく伝える通知支援
まずはお気軽にご相談ください。
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