コラム Column
ヘルスケア
2024-12-20
薬をたくさん服用するとどうなる?ポリファーマシーの基礎知識と解決策
高齢者に多い「ポリファーマシー」をご存じですか?薬の多剤併用がもたらす影響とその解決策を考えます。

年齢を重ねるとともに増える薬の数、特に6種類以上の薬を服用する「ポリファーマシー(多剤併用)」の状態は、健康に思わぬリスクを招くことがあります。薬は健康を支える大切なものですが、その使い方次第で思わぬ影響が出ることも。このコラムでは、ポリファーマシーの基礎知識、具体的なリスク、そして健康保険組合様が果たすべきサポートのあり方について、わかりやすく解説します。
ポリファーマシーとは?
「ポリファーマシー」とは、6種類以上の薬を同時に服用している状態を指します。高齢者では、複数の病気を治療するために処方された薬が積み重なり、この状態に陥ることが少なくありません。
例えば、糖尿病や高血圧、不眠症などの治療にそれぞれ薬が処方されるほか、痛み止めや胃腸薬が追加されることもあります。一見すると適切な治療に見えるかもしれませんが、薬が増えすぎることで思わぬ健康リスクを招く可能性があります。
ポリファーマシーがもたらすリスク
薬の多剤併用によるリスクについては、多くの研究で指摘されています。特に高齢者の場合、体内での薬の吸収や代謝が若い頃と比べて変化しているため、予想以上に薬が効きすぎたり、副作用が出やすくなったりすることがあります。
薬の服用については、必ず医師の診察や判断に基づくべきですが、問題を正しく理解するには、どのようなリスクが考えられるのかを知っておくことも大切です。以下に代表的なリスクを挙げます。
ふらつきや転倒
降圧薬や睡眠薬の影響で注意力やバランス感覚が低下し、転倒することがあります。転倒は骨折や寝たきりの原因にもなるため、特に注意が必要です。
認知機能への影響
抗コリン作用を持つ薬は、記憶力や集中力に悪影響を及ぼすことがあります。「最近物忘れが増えた」という場合、服用中の薬が関係している可能性も考えられます。
薬物相互作用
複数の薬が互いに影響を及ぼすことで、薬の効果が弱まったり、逆に強まりすぎたりすることがあります。この予測が難しい相互作用は、注意が必要な問題です。
胃腸障害や栄養不足
胃腸薬や抗生物質の長期使用により、胃が荒れたり栄養の吸収が妨げられたりすることがあります。高齢者の場合、これが体力の低下につながることもあります。
服薬ミス
薬の数が多いほど、「飲み忘れ」や「間違えて飲んでしまう」リスクが高まります。こうしたミスが治療に影響を与えることもあるため、管理が重要です。
ポリファーマシーが生じる背景
薬が増えすぎる原因には、高齢者の生活環境や医療体制に特有の課題が関係しています。薬の管理は、高齢者個人だけでなく、医療機関や家族が一体となって取り組む必要があります。
複数の医療機関を受診
一人の医師が全体を管理する「かかりつけ医」がいない場合、異なる医療機関から重複した処方が行われることがあります。医療機関同士の情報共有が不足すると、薬が増える原因になります。
慢性疾患の増加
高齢者が抱える高血圧や糖尿病、関節痛などの慢性疾患に対して、それぞれ薬が処方されるため、薬の種類が積み重なりやすくなります。
薬の見直し不足
一度処方された薬がそのまま継続され、不必要な薬が減らされないケースがあります。これを防ぐには、医師や薬剤師と連携し、定期的に薬を見直すことが大切です。
健康保険組合様が果たすべき役割
ポリファーマシーの課題を解決するために、健康保険組合様は次のような取り組みを行うことが期待されます。
啓発活動
ポリファーマシーのリスクと対策をわかりやすく伝えることで、加入者様が薬の適正使用に関心を持つきっかけを作ります。
お薬手帳の普及
薬を全て記録し、医師や薬剤師が適切に見直しを行える環境を整えることが大切です。
かかりつけ医の推奨
一人の医師が全体の治療方針を把握する「かかりつけ医」を持つことで、薬の重複や過剰処方を防ぐことができます。健康保険組合様は、こうした医療体制を加入者様に積極的に周知する役割を担います。
まとめ
「ポリファーマシー(多剤併用)」は、高齢者にとって身近で深刻な健康課題です。薬が増えすぎることで、転倒や認知機能の低下、胃腸障害といったリスクが高まります。これらを予防するためには、健康保険組合様が加入者様に正しい情報を提供し、適切なサポートを行うことが重要です。
また、当社クイックスでは、こうした啓発活動をお手伝いするためのコンテンツ制作サービスをご提案しています。ニーズに合わせた情報発信をサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
参考:日本老年医学会「多すぎる薬と副作用」(https://jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20161117_01_01.pdf)
本コラムの内容は、一般的に広く知られている医療情報に基づいています。具体的な薬の見直しや服用に関する判断については、必ず医師や薬剤師にご相談ください。
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