コラム Column
マーケティング
2025-02-10
ナッジ理論を活用した展示会集客:DMとメールの戦略的アプローチ~自社開催の展示会「Wellness 5」集客の事例をもとに~
受け手の行動を促す施策とは?自社の事例とともにご紹介します。

企業が展示会を開催する際、新規顧客の獲得や既存顧客の来場促進は大きな課題です。従来のDMやメールを送るだけでは、受け手が行動を起こすとは限りません。
弊社では、ヘルスケア関連イベントの「Wellness 5」の集客のために、
①MA(マーケティングオートメーション)とDMのを併用と、②ナッジ理論を活用した施策を実施しました。
本コラムでは、その具体的な施策と結果を紹介します。
テスト内容
本施策では、以下の3つのポイントを軸に、効果検証を行いました。
1. MA(マーケティングオートメーション)とDMの併用
- メールによる展示会告知を先行して実施(合計 169件(新規97件・既存72件) を配信)
- DMを後追いフォローとして活用し、メールの開封率や反応率向上を狙う
2. 新規・既存向けに異なるナッジを活用したメール施策
- 新規向け:簡潔で目を引くメッセージ、希少性(限定50名・1日限定)を強調
- 既存向け:詳細情報を伝え、来場の意思決定を促進
3. DMによるフォローアップ
- メールが飽和している昨今、DMを活用することで「気づき」を与える
- 新規顧客に対して、展示会の存在を印象付ける
- 既存顧客には、メールで伝えきれない情報を補足し、行動を促す
新規・既存向けに異なるナッジを活用したメール施策とは?
「Wellness 5」の集客施策では、MINDSPACEのフレームワークを用いました。
MINDSPACEとは?
ナッジ理論を実践する際、MINDSPACEフレームワークが有効です。
MINDSPACEは、行動を促す9つの心理的要因を整理したフレームワークで、特にマーケティングや公共政策で活用されています。
MINDSPACEの要素 説明 Messenger(伝え手) 影響力のある人や組織が情報を伝えると、行動が変わる Incentives(報酬) 損失回避の心理を利用し、行動を促す Norms(社会規範) 「他の人もやっている」と思わせることで行動を促す Defaults(デフォルト) あらかじめ選択されているものを受け入れやすい Salience(顕著性) 目立つ情報や、印象に残る表現が行動を左右する Priming(プライミング) 事前の情報が、その後の行動に影響を与える Affect(感情) ポジティブ・ネガティブな感情が意思決定に影響を与える Commitments(約束) 「約束」や「宣言」をすることで行動を継続しやすくする Ego(自尊心) 自分のイメージを保つために、行動を選択する
今回の施策「Wellness 5」の集客施策では、MINDSPACEの中でも特に以下の要素を活用しました。
- Salience(顕著性) → 目を引くデザインとキャッチコピー
- Defaults(デフォルト) → 「来場が当たり前」と思わせる設計
- Incentives(報酬) → 「セミナー限定50名」などの限定要素
具体的には、以下のナッジ手法をDM・メールに適用しました。
MINDSPACE ナッジ手法 DMでの活用ポイント Salience ウェブレン効果(希少性) 「分野を網羅した展示会が初開催」「1日限定」「セミナー限定50名」 Incentives アンカリング(印象付け) 「2024年最後の開催!」 Incentives フレーミング(見せ方の工夫) 「来場者〇〇名限定!」
ナッジ理論を活用したDMの紙面設計
1. 新規向けDM
上記のナッジ手法を適用し
目的:
興味を引き、申し込みを即決させる
ポイント:
- 文字を減らし、一目で伝わるキャッチコピーを強調
- 視覚的要素を活用(太字・色・アイコンなど)
- キーワードを散らすことで、よりキャッチーな印象に
- 会社名よりメリット、サービス内容を中心にPR
- 「一日のみの開催」→「一日のみの限定開催」に変更し、機会損失を提示
2. 既存向けDM
目的:
すでに関心のある人に、さらに理解を深めてもらう
ポイント:
- より詳しい情報を記載し、納得感を強化
- スケジュールやセミナー情報を明示し、来場の決め手を提供
- 「参加企業」の情報と出展社数を詳しく伝え、安心感、お得感を向上
- 「一日のみの開催」→「一日のみの限定開催」に変更し、機会損失を提示
DMの検索誘導の活用
DMでは、QRコードの記載に加え、検索エンジンを利用した情報提供を取り入れました。DMに検索窓のイラストと検索キーワードを配置し、受け手が自発的に検索し、より詳細な情報を得るきっかけを作る工夫を施しました。
効果検証と結果
1. 申込数
チャネル 新規申込数 既存申込数 DM(QRコード読み取り) 4名 0名 メール(MA配信) 0名 1名 参照(外部リンク・紹介) 2名 0名 検索(DMの検索窓経由の可能性が高い) 5名 2名 直接訪問(URLを直接入力) 20名 0名
2. 変化点
- メールをスルーした顧客が、DMを見て申し込みにつながるケースが発生
(DMとメールの組み合わせにより、新規顧客の申し込みが増加した可能性) - 既存顧客の申込は少なかったが、検索経由でのアクセスが一定数あった
(DMの検索誘導の影響が大きい可能性)
3. 過去メール配信の数値との比較
過去メール (2023/10/05) 新規 (2024/10/15) 既存 (2024/10/15)指標 送信数 214件 97件 72件 URLクリック数(クリック率) 0件(0.00%) 11件(11.34%) 11件(15.28%) 開封率(開封数 / 未読数) 14.02%(30/184) 25.77%(25/72) 30.56%(22/50)
■ 主なポイント
- 新規・既存ともに開封率・クリック率が大幅に向上
- DMと組み合わせたアプローチが、新規申込に貢献
- 検索流入が一定数あり、DMの検索窓表記が行動を後押しした可能性が高い
まとめ
今回の展示会集客施策では、MA(メール配信)とDMを併用することで、新規顧客の申し込みが増加しました。
特に、「希少性」や「限定要素」を強調したDMが、新規顧客の関心を引く要因となりました。
また、DMの検索誘導が来場促進に貢献し、メールをスルーしていた層にもアプローチできたと思われる点が成果の一つです。
今後の展示会集客においても、ナッジ理論を活用し、ターゲットに応じた最適なチャネルとメッセージ設計を行うことが重要です。
ぜひ、貴社の展示会施策にも検索誘導を活用し、さらなる集客効果の向上を目指してみてください。
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